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2026年6月1日 ❘ 活用事例

プロサッカー選手と呼吸
〜一流のプロサッカー選手ほど風船に苦戦する?〜

サッカーの試合でボールを追うプロサッカー選手

スポーツ現場では、選手に対して「持久力」「筋力」「スプリント能力」といったフィジカルへのアプローチが中心となることが多いですが、実際には呼吸の使い方が選手のパフォーマンスやコンディションに影響しているケースもあります。

特にサッカーのように高強度の運動を繰り返す競技では、短く速い呼吸が中心となる場面が多くなりますが、その影響によって呼気のコントロールに偏りが生じることがあります。この状態では、十分な肺活量を有していても、風船を膨らませるといった単純な呼気動作に苦戦することがあります。

そこで、本記事を第1回として、プロサッカー選手をはじめ様々なアスリートに対してBREVIを活用されている片貝功基さんに全4回にわたり、プロサッカー選手に見られる呼吸パターンや、呼気戦略と競技特性との関係、そしてBREVIを用いた呼吸評価の視点から見えてくる特徴について、解説して頂きます。

今回お話いただいたのは

本記事の作成にあたっては、PRIVATE GYM HOOP代表・片貝功基さんにご執筆いただきました。片貝さんは群馬県でプライベートジムを開業されています。今回は実際にジムに来店された、プロサッカー選手の呼吸データをもとに、プロサッカー選手の呼吸と競技特性との関係を解説していただきます。

片貝 功基 様

理学療法士 片貝 功基 様

(PRIVATE GYM HOOP代表)

初めまして、PRIVATE GYM HOOP代表の片貝功基と申します。理学療法士としてプロサッカーの現場に携わった経験をもとに、現在は呼吸を起点としたコンディショニングおよびトレーニング指導を行っています。本稿では、プロサッカー選手に見られる呼吸の特徴に着目し、呼気戦略という視点からパフォーマンスとの関係性について考察します。

呼気戦略と競技特性から考える呼吸パターン

オフシーズンになると、PRIVATE GYM HOOPにはプロサッカー選手がトレーニングに訪れます。その中で、複数の選手に共通して見られる興味深い現象があります。それは、風船を膨らませるのに苦戦するということです。

体力や持久力、心肺機能の高いプロサッカー選手が、なぜ単純な呼気動作に見える風船を膨らませるということが難しいのでしょうか。この現象は一見すると不思議に感じられますが、呼吸という視点から見ると、一定の傾向が見えてきます。

|呼吸の“吐き方”という視点

呼吸というと、一般的には「どれだけ多くの空気を肺に取り込めるか」といった肺活量に関する検査が主流になっています。しかし、実際の運動場面においては、“どのように吐くか(呼気)”も重要な要素です。

特に風船を膨らませる動作では、強く長く息を吐き続ける必要があり、さらにそのまま風船の口を絞ることなく吸気を行うことで、風船が縮まろうとする力に打ち勝つだけの腹部の筋活動が求められます。

これは単なる肺活量ではなく、呼気や吸気を適切にコントロールする能力が求められる動作です。プロサッカー選手の呼吸を評価すると、まず、この呼気のコントロールに特徴が見られるケースが少なくありません。

|呼気戦略と筋活動

一般的に適切と言われる呼吸では、呼気の際に主に腹横筋、内腹斜筋といった腹部の筋群が働く必要があります。この働きによって、横隔膜は休息することができ、息を安定して長く吐くことが可能になります。

しかし実際の評価の中で、腹横筋や内腹斜筋よりも、腹直筋が優位に働く呼気パターンが見られることがあります。腹直筋が優位な状態では、一見すると体を丸くすることができるため、十分な呼気が行えそうですが、実はそうではありません。

むしろ肋骨の内旋を制限してしまい、呼気を持続的にコントロールすることが難しくなります。その結果、肺活量自体は十分にあるにもかかわらず、風船を膨らませるような動作に苦戦します。

これは呼吸機能の低下というよりも、呼気戦略の偏りとして捉えることができます。

|サッカーの競技特性による呼吸パターンの定着

こうした呼吸の特徴は、サッカーという競技特性とも関係している可能性があります。サッカーは90分間にわたり、スプリントや方向転換、接触といった高強度の動作を繰り返す競技です。このような環境では、呼吸はゆっくり深く行うというよりも、短く速い呼吸を繰り返すパターンになりやすいです。

その結果、長く息を吐き続けるような呼気コントロールを使う場面が少なくなり、腹直筋に依存した呼吸パターンが形成される可能性があります。

プロサッカー選手に対しての呼吸評価とBREVIの活用

HOOPでは呼吸評価の一つとしてBREVIを用いています。BREVIでは呼吸数や胸部・腹部の動きを可視化することができます。

実際にプロサッカー選手のデータを見ると、安静時にもかかわらず呼吸数が多く、胸郭の動きが小さいといった特徴が見られることがあります。胸郭の動きが少ない場合、内腹斜筋・腹横筋の活動が不十分で、胸郭内に空気が溜まっている状態が示唆されます。

一方で、呼吸の使い方に対して適切な介入を行うことで、呼吸数の変化や胸部・腹部の動きの改善が確認されます。

PRIVATE GYM HOOPの店内

|あるプロサッカー選手の身体評価から見えた呼吸の問題

ここでは、あるプロサッカー選手の症例を提示します。詳細については第2回以降で解説するため、ここでは概要のみご紹介します。

本症例は、ハムストリングスの肉離れや足関節の関節内遊離体(いわゆる“ねずみ”)、アキレス腱炎といった既往を有していました。これらの既往を踏まえて動作を観察すると、骨盤の前傾や足部の過回内といったアライメントの特徴が確認されました。

さらに呼吸動作を評価したところ、腹腔内圧が適切にコントロールされていない状態が認められました。これらの所見から、局所的なアプローチだけでなく、呼吸機能の改善が必要であると判断し、呼吸への評価と介入を実施しました。

|BREVIで可視化されたプロサッカー選手の呼吸の問題

BREVIによる測定をしてみたところ、呼吸数は1分間に13回と安静呼吸にしてはやや浅く、胸部の動きが3.2mm、腹部の動きが9.4mmと、腹部優位の呼吸パターンが確認されました。

  • 呼吸数:13回/分
  • 胸部の動き:3.2mm
  • 腹部の動き:9.4mm
呼吸介入前のBREVI計測結果

このような呼吸パターンは、体幹の安定性低下や四肢の運動連鎖に影響を及ぼすことがあり、このプロサッカー選手で見られた骨盤前傾や足部の過回内といったアライメントの特徴とも関連している可能性があります。

また、こうした身体の使い方の偏りが長期的に続くことで、特定の部位に負担が集中しやすくなり、ハムストリングスの肉離れや足関節の関節内遊離体、アキレス腱炎といった既往歴の一因となっている可能性も考えられます。

プロサッカー選手に見られた呼吸パターンと身体動作の変化

呼吸介入を行った後のBREVIの計測結果は、呼吸数は1分間に6回まで低下しました。また胸部の動きが18.5mmと、呼吸介入前と比べて大幅に改善が見られました。そして、吸気・呼気時における胸部と腹部の動きに連動性が見られるようになりました。

  • 呼吸数:6回/分
  • 胸部の動き:18.5mm
  • 腹部の動き:25.3mm
呼吸介入後のBREVI計測結果

|呼吸介入後に見られた身体感覚の変化

呼吸介入後、BREVIの数値的な変化だけでなく、本人の身体感覚にも変化が見られました。

まず、「地に足がついた感覚がある」といった発言が聞かれ、体幹の安定性や身体の支持感覚の向上が示唆されました。

さらに、その後の経過として「息が上がりにくくなった気がする」との発言も聞かれ、呼吸効率の向上や運動時のコンディションにも良好な変化が生じている可能性が考えられました。

呼吸から見える身体機能の新たな視点

プロサッカー選手であっても、呼吸動作には偏りが見られることがあります。特に風船を膨らませることが困難なケースでは、腹直筋優位の呼気パターンとなり、内腹斜筋や腹横筋を十分に活用できていない状態が確認されます。

これは呼吸能力の問題ではなく、呼気戦略の問題です。

BREVIによって呼吸を可視化することで、その偏りを客観的に捉えることができ、さらに介入による変化も明確に確認することができます。

呼吸は無意識に行われる動作であるがゆえに見過ごされやすいですが、その質に目を向けることで、身体機能の新たな側面が見えてきます。

まずは「しっかり吐けているか」という視点を持つことが、呼吸を捉える第一歩となるでしょう。

呼吸はどう変わったのか?次回はBREVIデータの詳細と介入の実際へ

本記事では、プロサッカー選手に見られる呼吸パターンの特徴や、その背景にある呼気戦略について概説しました。

次回の第2回では、本症例におけるBREVIデータのより詳細な解釈と、実際に行った呼吸介入の内容について解説していきます。呼吸の変化がどのように身体機能へ影響を及ぼしていくのか、より具体的な臨床の視点からご紹介しますので、ぜひ続編もご覧ください。

BREVIの機能や導入方法、料金などの詳細は、公式Webサイトにまとめています。呼吸の状態を客観的に把握したいと感じている方は、ぜひ一度ご覧ください。

「BREVI」の詳細はこちら

活用事例

呼吸可視化BREVIは、整形外科クリニック・治療院・ピラティス/ヨガスタジオなど、さまざまな現場で活用されています。ここでは、たとえば呼吸データをどのタイミングで測り、どのように説明・介入に活かしているのか、そして現場にどんな変化が生まれたのかなど、実例をもとに紹介します。「評価が伝わらない」「リピートの継続につながらない」といった課題に対して、呼吸を“見える化”することで何が変わるのか、導入前後の工夫やデータも含めて、ぜひ各事例をご覧ください。

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