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2026年9月4日 ❘ 活用事例

睡眠サポートにおけるBREVI活用事例
〜睡眠障害を改善し社会復帰を達成した症例〜

間接照明の灯る寝室のベッド

近年、呼吸エクササイズは睡眠の質を改善する方法の一つとして注目されています。その効果が期待される理由として、副交感神経活動の促進による心拍数・血圧の低下、コルチゾールなどのストレスホルモンの減少に伴う不安の軽減、さらには呼吸機能の改善といった複数の生理学的作用が考えられています。臨床現場においても、呼吸介入によって睡眠状態が改善したという声を耳にする機会は少なくありません。

今回は、島根県松江市でBreath Wellを開業し、呼吸と睡眠を主軸とした健康支援に取り組まれている蔦川和希さんにご協力いただきました。

本記事では、「なぜ呼吸が睡眠の質に影響するのか」「深いノンレム睡眠を確保するために重要なポイントは何か」について整理するとともに、実際の症例を提示していただき、呼吸介入が睡眠に与える影響について解説していただきます。

今回お話いただいたのは

蔦川 和希 様

理学療法士 蔦川 和希 様

(Breath Well代表)

https://kaztsu0504.wixsite.com/breathwell

初めまして、蔦川和希と申します。理学療法士として運動器分野の臨床に携わりながら、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、きほんの呼吸®呼吸コンディショニングスペシャリスト、睡眠ウェルネスアドバイザーとして、呼吸と睡眠を軸にコンディショニングを行っています。今回は睡眠の改善に加えて社会復帰を果たした症例を交えて、呼吸と睡眠についてお伝えしていきます。

今回お話を伺ったのは、Breath Well代表の蔦川和希さんです。蔦川さんは島根県でご開業されており、幅広い視点からクライアント様へご対応を行っておられます。今回はBREVIを活用して睡眠障害の改善と社会復帰を果たした実症例をベースに、呼吸が睡眠に与える影響や睡眠障害を抱える方に対してのBREVIの活用方法についてお話を伺いました。

ノンレム睡眠(N3)と呼吸の関係

|N3が重要とされる理由

睡眠の質を考えるうえでは、特に入眠後早期に出現する、深いノンレム睡眠(N3)が重要です。N3は、身体の回復や成長ホルモン分泌と深く関連していることが知られています。

【睡眠ステージの推移と深いノンレム睡眠(N3)の出現タイミング】

睡眠ステージの推移を示す脳波波形。深いノンレム睡眠(N3)が入眠後前半に多く出現している

株式会社S’UIMIN「InSomnograf®」による脳波波形
深いノンレム睡眠(N3)は主に入眠後前半に多く出現し、この時間帯に成長ホルモンの分泌が活発になることが知られている。

N3は、成長ホルモンの分泌と密接に関連する睡眠段階です。これまでの研究では、成長ホルモンの多くは入眠後早期の深いノンレム睡眠(N3)の時間帯に分泌されることが報告されています。成長ホルモンは、組織の修復や筋タンパク質合成など、身体の回復に重要な役割を担っています。こうしたことから、睡眠の質を考えるうえでは、睡眠時間の長さだけでなく、N3のような深い睡眠を十分に確保することも重要と考えられます。

|深い睡眠への移行を支える呼吸の役割

こうした深い睡眠へ円滑に移行するためには、入眠時に副交感神経が優位な状態となることが求められます。そのための手段の一つとして有効なのが、「呼吸」へのアプローチです。

呼吸は、自律神経活動に直接的な影響を与える数少ない生理機能の一つであり、近年では睡眠の質を向上させる介入手段としても注目されています。私自身も寝つきが悪い時には呼吸エクササイズを用いており、その効果を実感しております。

症例からみる、呼吸介入と睡眠の変化

ここまで、呼吸が自律神経活動を介して睡眠の質に影響を与える可能性について整理してきました。一方で臨床において重要なのは、こうした生理学的背景が実際の症例の中でどのように現れるのかという点です。

Breath Wellに実際に来られた症例をもとに、呼吸状態の評価や介入によって睡眠の質がどのように変化したのかを紹介します。特に、BREVIを用いた呼吸の可視化が、睡眠に関する課題の把握や介入方針の検討にどのように役立ったのかについて、臨床的視点から解説していきます。

|今回ご紹介する方の背景

本症例は、精神疾患および発達障害を背景にもつ50代女性です。初回来院時(2025年7月)には、睡眠時間および臥床時間が著しく延長し、昼夜の生活リズムが大きく乱れており、睡眠障害により日常生活へ支障をきたし、就労が困難な状態が続いている状況でした。

|臨床経過:初回評価(2025年7月)

初回評価時には、睡眠時間が不規則で、日によって入眠時刻や起床時刻にばらつきがみられました。また、日中の気分にも変動があり、生活リズムの不安定さがうかがえる状態でした。

BREVIによる呼吸評価では、まず1分間の呼吸数が22回と多いことが分かりました。そして呼吸波形では、腹部の動きに対して胸郭の動きが乏しく、胸腹部の連動性が低下している様子が確認されました。

  • 呼吸数:22回/分
  • 胸部の動き:0.4mm
  • 腹部の動き:2.8mm
2025年7月(初回評価)のBREVI計測結果(胸部と腹部の動きの波形)

|介入内容:呼吸エクササイズと睡眠状態のモニタリング

本症例では、胸郭の可動性を引き出すために徒手療法やストレッチを実施しました。また、自宅で実施できる呼吸エクササイズ(きほんの呼吸®)を指導し、呼吸を整えることで自律神経機能へのアプローチを継続的に行いました。

仰向けになったクライアントの呼吸を確認する蔦川さん

また、主観的な睡眠状態を把握するために睡眠日誌を活用し、睡眠時間、入眠時刻、起床時刻、日中の気分などを継続的に確認しました。睡眠日誌から得られた情報をもとに、睡眠に関する認知や行動の改善を目的とした認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia:CBT-I)を取り入れながら介入を行いました。あわせて、生活リズムの調整を目的とした睡眠衛生指導も実施しました。

実際に記録していただいた睡眠日誌

1週間の睡眠パターンと日中の支障を記録した睡眠日誌

|指導した呼吸エクササイズ:きほんの呼吸®

本症例に対して指導した呼吸エクササイズでは、「きほんの呼吸®」を指導しました。指導した呼吸エクササイズのリズムは以下の通りです。

  • 鼻から3秒間、息を吸う
  • 口から8秒間、息を吐く
  • 息を吐き終わったら、3秒間止める

特に吐く時間を長く確保すること、最後まで息を吐き切ること、息を吐く際は肋骨を下げる感覚を意識することを促しました。本症例は、初回介入時には5秒間息を吐くことも困難であり、呼気後の息止めも十分に行えない状態でした。しかし、継続的な練習により、現在では「3秒吸う、8秒吐く、3秒止める」というリズムで安定して呼吸できるようになっています。この変化は、呼吸筋機能の改善に加え、呼吸を介した自律神経調整能力の向上を示唆するものと考えられます。

本症例のその後の経過

|2025年12月

2025年12月時点では、ご本人に記録していただいた睡眠日誌を確認すると、体調や気分が優れない日が続いており、体調が悪い日には9〜13時間眠った後も布団の中で過ごす時間が長くなるなど、日中の活動が著しく制限されている様子が伺えました。また、就労再開には至っておらず、生活機能面では依然として課題が残る状態でした。

BREVIによる呼吸評価では、依然として胸部と腹部の動きに乖離がみられ、呼吸をする際に横隔膜が十分活用されていない様子が確認されました。ただし、7月の初回評価時と比較すると呼吸数は明らかに減少しており、呼吸パターンには一定の改善傾向が認められました。

  • 呼吸数:10回/分
  • 胸部の動き:5.9mm
  • 腹部の動き:14.7mm
2025年12月のBREVI計測結果(胸部と腹部の動きの波形)

|2026年6月

2026年6月には、臥床時間の短縮がみられ、体調も安定し始めました。睡眠リズムは徐々に整い、日中の覚醒度にも改善が認められました。その結果、社会復帰に向けた具体的な準備が可能な状態となりました。

BREVIによる呼吸評価でも、施術前の時点で胸部と腹部の動きが少しずつ一致するようになり、2025年7月の呼吸データと比べると胸腹部の連動性の改善がみられました。このことから、徐々に横隔膜を活用した呼吸パターンへと移行していると考えました。

睡眠に関しても、2025年7月には不規則だった睡眠時間や生活リズムが、2026年6月には大きく改善しました。寝つきが良くなり、23時頃の就寝、翌朝5時頃の起床という一定の睡眠リズムが形成され、仕事に復帰できるまでに日中の活動も安定しました。

介入前:2025年7月

介入前(2025年7月)のBREVI計測結果(胸部と腹部の動きの波形)

【呼吸データ】

  • 呼吸数:22回/分
  • 胸部の動き:0.4mm
  • 腹部の動き:2.8mm

【睡眠に関する訴え】

  • 朝に起きられず、昼頃まで寝ている。睡眠時間は日によって違う。
  • 気持ちは不安定になりやすい。

介入後:2026年6月

介入後(2026年6月)のBREVI計測結果(胸部と腹部の動きの波形)

【呼吸データ】

  • 呼吸数:7回/分
  • 胸部の動き:4.8mm
  • 腹部の動き:8.6mm

【睡眠に関する訴え】

  • 寝つきが良くなって、睡眠のリズムが整った。
  • 夜11時には眠れていて、毎朝5時に起きて仕事に行けている。

そして仕事復帰を達成し、現在は睡眠の質・量ともに安定した状態を維持できるようになっています。

ご本人の自覚的改善も経て、臥床時間の短縮・体調安定・社会復帰という段階的な回復が認められました。そして、本症例自身も呼吸への興味が芽生え、自ら書籍を購入して勉強されるなど、主体的な行動変容にもつながりました。

本症例から考えられる呼吸介入の意義

|呼吸パターンの変化が示すもの

本症例では、精神疾患および発達障害を背景とする睡眠障害に対し、ストレッチ・徒手療法・認知行動療法と合わせて、呼吸エクササイズによるアプローチを実施しました。初回評価時には、呼吸数の増加に加え、胸部の動きが乏しく、胸腹部の連動性が低下した呼吸パターンが認められました。

その後、継続的な介入を通して呼吸数の減少や胸腹部の連動性の改善がみられ、2026年6月時点では、施術前の呼吸波形においても胸部と腹部の動きが少しずつ連動し同期していく様子が確認されました。これは横隔膜を含む呼吸筋の活動が促され、より効率的な呼吸パターンへ移行していた可能性が考えられます。

また、横隔膜の活動は迷走神経を介した副交感神経活動とも関連しているため、心拍数の低下やリラックス反応が生じやすい状態が形成された可能性があります。

|呼吸介入と深いノンレム睡眠(N3)の関係

こうした変化は、単に「呼吸が整った」ということにとどまらず、入眠時に副交感神経優位な状態へ移行しやすくなったと考えています。

深いノンレム睡眠(N3)は、身体の回復や成長ホルモン分泌と深く関連しており、睡眠の質を考えるうえで重要な睡眠段階です。本症例においても、呼吸を介した自律神経調整が深い睡眠への移行を支え、その結果としてN3の確保につながった可能性があると考えられます。

N3が十分に確保されることは、組織修復や疲労回復、免疫機能の維持といった身体の恒常性に寄与するだけでなく、睡眠全体の質の向上にもつながります。

本症例でみられた睡眠の質・量の安定、日中の覚醒度の改善、さらには仕事復帰という生活機能面での変化は、こうした呼吸パターンの改善と深い睡眠の確保が複合的に関与した結果であると考えています。

|睡眠支援における呼吸介入の可能性

こうしたことから、普段の呼吸を整えることや、就寝前に意識的な呼吸エクササイズを行うことは、交感神経優位な状態から副交感神経優位な状態へ移行するための自己調整ツールとして機能する可能性があります。

本症例の経過からも、呼吸介入は睡眠障害を有する方に対する有用な支援手段の一つとなり得ると考えられます。

最後に

私は本症例を通じて、呼吸を「可視化」することの重要性を強く実感しました。客観的なデータを示すことで、患者様ご自身が「自分の呼吸の乱れ」と「睡眠の質への影響」を視覚的に理解でき、呼吸介入に対する納得感が飛躍的に高まったと感じています。BREVIは言葉だけでは伝わりにくい呼吸の細かな変化や運動の成果を、確かな指標として示してくれます。

治療においてクライアント様の身体の変化を引き出すためには、何よりもクライアント様自身で行うエクササイズの「継続」が必要です。そして継続を促すためには、本人のモチベーション維持が欠かせません。

客観的な変化を確認することが患者様のモチベーションとなり、継続的な来院と自宅でのエクササイズにもつながります。BREVIは、患者様のモチベーションを高め、行動変容と身体の変化を支えるために、なくてはならないツールとなっています。

補足:InSomnograf®について

「InSomnograf®(インソムノグラフ)」は、睡眠時の脳波を測定してAIで解析し、専門家のアドバイスや改善アドバイスを加えて利用者にレポートする、睡眠計測サービスです。(株式会社S’UIMIN公式サイトより引用)

補足:きほんの呼吸®について

「きほんの呼吸®」は、BP&CO.代表である大貫崇氏が提唱する呼吸コンセプトです。人間本来の効率的な呼吸パターンを取り戻すことを目的とし、横隔膜を中心とした呼吸の獲得を通じて、身体機能やコンディショニング、自律神経機能へのアプローチなど、幅広い分野で活用されています。

編集部まとめ

今回ご紹介した症例からみえてきたのは、睡眠障害に対する支援において、睡眠そのものだけでなく「呼吸」にも着目することの重要性です。

呼吸は、自律神経活動に直接影響を与える数少ない生理機能の一つであり、適切な呼吸パターンを獲得することは、睡眠の質の向上につながる可能性があります。ご紹介いただいた症例の方は、呼吸パターンの改善とともに睡眠状態や日中の活動性が変化し、最終的には社会復帰という生活機能面での改善にもつながりました。

また、BREVIによって呼吸を客観的に評価・可視化できたことは、介入前後の変化を共有し、患者さん自身が身体の変化を理解するうえでも大きな役割を果たしました。呼吸を“見える化”することは、評価の質を高めるだけでなく、継続的なセルフケアや行動変容を支えるきっかけにもなります。

睡眠の質を高める第一歩は、「眠り」を評価することだけでなく、「呼吸」を知ることから始まるのかもしれません。

BREVIの機能や導入方法、料金などの詳細は、公式Webサイトにまとめています。呼吸の状態を客観的に把握したいと感じている方は、ぜひ一度ご覧ください。

呼吸可視化アプリ「BREVI」の詳細はこちら

活用事例

呼吸可視化BREVIは、整形外科クリニック・治療院・ピラティス/ヨガスタジオなど、さまざまな現場で活用されています。ここでは、たとえば呼吸データをどのタイミングで測り、どのように説明・介入に活かしているのか、そして現場にどんな変化が生まれたのかなど、実例をもとに紹介します。「評価が伝わらない」「リピートの継続につながらない」といった課題に対して、呼吸を“見える化”することで何が変わるのか、導入前後の工夫やデータも含めて、ぜひ各事例をご覧ください。

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